君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】



そう言って、裕先生の弟さんとそのお友達は、
微笑みかけてくれた。 




何もかもが少しずつ、
色を取り戻し始めた時間。



そんな時間は、
もう……私には望めないものだと思ってたから。





そしてそんな……望むことのできなかった
大切なものをくれる……託実くんを、
私は……昨日傷つけた。




託実くんの気も何も知らないで。




見舞客が帰って、消灯時間になった病室のベッド。


私は掛布団の中で丸まりながら、
罪悪感に苛まれる。

気が付いたら涙が零れだしてた。



ズキンと痛む胸はその言葉が……
刃であることを知って放たれたものだから。



自分自身のストレスのはけ口にも利用して、
羨ましさをぶつけた。


だけど……私のような悲しみのフィールドに
閉じ込めちゃいけない。


そう思ったのも確かだったの。


その為なら、
どれだけ傷ついてもいい。




伝え方のわからない私が
それでも何かを伝えたいと思わせてくれた
彼だから……。






傷ついた翼の彼に、
さらに貫いた私自身の刃。




そして……そんな私の心に、
光を灯してくれた、託実くんの大切な人たち。





いろんな想いがぐちゃぐちゃになって、
溢れだして、
私一人ではどうすることも出来なくなってた。




優しくされると……弱くなっちゃうよ。



そう思う私自身と、
そんな優しさを噛みしめたい私。



二人の私は、朝になるまで葛藤し続けた。







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