君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「あらっ、姉さん」
母さんは、ベッドサイドの椅子から立ち上がって
姫龍伯母さんを迎え入れる。
一綺兄さんの母上である、この目の前の綾音姫龍(あやね きりゅう)は
世界的有名なデザイナーであり、趣味で俺に作ってくれたみたいに焼き物をして食器を作ったり、
後は最近では、デザインだけで飽き足らず、
着物の方は絵付けの職人まがいのことも勉強し始めてる。
そして何よりも俺的に凄いのは、神前悧羅学院において絶対の存在である紫伯父さんを
掌で転がしてるような印象があるってところ。
「託実、食器を変えたら食欲が出るようになったか?」
ふいに、伯母さんが俺に問いかける。
「まぁね。
有難う、姫龍伯母さん」
当たり障りのない言葉を返事しながら、
あと一つ、アイツの分作ってよって頼んでみるか悩んでた。
可愛い甥っ子の頼みだ、頼んだらNOとは言われないのは想像がつく。
それでも、依頼できないのはアイツが居る前で頼みたくないって言う俺の変なプライド。
「姉さん、頼んでたものもう一つ出来たかしら?」
「出来たわ。
だから託実の様子を見がてら、見舞いに来たのよ薫子」
グルグルと思考を張り巡らせている間に、
母さんと伯母さんは会話続ける。
もしかして、その会話の流れ、出来てるのか?
俺が頼まなくても……。
母さんが頼んだのか?
それとも、裕兄さん?裕真兄さん?親父……?
その後も、伯母さんの手から紙袋を受け取った母さんは、
アイツの方へと歩いていく。
「はいっ、今日は託実の母親として、
お近づきのしるしに、私からのプレゼントよ。
目の前に居る姉が作った食器なんだけど、
いつも食事、全部食べきれてないみたいだから
少し気分を変えたらどうかしら?」
母さんがアイツに話しかけてる間に、
伯母さんも、アイツのベッドの方へと歩いていった。
アイツの方に、兄さんたちの視線も集中する。
アイツは戸惑ったように固まって、
リボンに手をかけたままフリーズ状態。
「理佳さんと言ったか?
私が作ったものだから大層なものじゃないわ。
気負わずに使って貰えると、作ったかいがあるかしら?」
おいおいっ、伯母さんよ。
世界のKiryuが作ったもんだぞ。
アイツが伯母さんのこと知ってたら、
それどころじゃないぞ。
突っ込みどころ満載な会話だな。