君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
ノーパソ?
なんでアイツに?
気になる俺は目が離せないまま、
アイツと兄さんの方に意識が取られる。
裕真兄さんにアイツが何かをと渡すと、
それを確認して、兄さんがノーパソを触る。
何を見てるのか、さっぱりだが
辛うじて、俺の聴覚に届いたのは『裕先生』と言う言葉。
裕兄さん?
兄さんがアイツに何かやったのか?
兄さんは、アイツが好きなのか?
それとも……アイツが兄さんを好きなのか?
複雑な心境のままで、アイツを見つめる俺。
ただアイツを見てるだけなのに、
何処が、胸が締め付けられるように痛くなった。
兄さんたちが帰った後、二人きりになった病室。
シーンと静まり返った部屋に、
掛布団に丸まりながら、声を殺して泣くアイツを感じた。
翌朝、アイツはいつもの様に目を覚まして、
伯母さんの食器を使って、朝ご飯を食べ始める。
伯母さんの食器を使ってくれてる。
それを確認できただけで、なんか心の中が軽くなった。
いつもの様に朝食を済ませると、
ダチに携帯から
『手術に向けて準備があるから、次に連絡するまで暫く来ないでくれ』っとメールを送信。
実際に嘘じゃないし、
アイツと一緒に過ごす時間を邪魔されたくなかったって言う想いもあって。
今以上にアイツを知ってみたい。
そんな気持ちだけが、俺を突き動かしていた。
術前リハビリをしながら術前検査の日々。
お盆前、俺の膝の手術の日が決まった。
前日の夜、俺は手術に備えての準備が始まる。
20時頃から浣腸されて、そのまま絶食モード。
腹は減ってるんだけど、食べれない。
ふて寝しようにも、明日の手術が気になって眠れない。
眠れないまま、時間だけが無駄に過ぎていく。
長い夜が明けて、朝陽が昇り始めると
ゆっくりと病院内は慌ただしくなり始める。