君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】





「理佳ちゃん?」






遠くで、
元弥君のお母さんらしい声が聞こえる。




そして……、
その声もやがて途絶えた。











目が覚めた時には、
心電図に、酸素マスク。

腕からは点滴。



重怠い体を起こして、
視線を移動させた先は
倒れた時に何度か運ばれたことがある
ナースステーションと隣接している部屋。





「理佳ちゃん。
 大丈夫?

 今、理佳ちゃんの
 ご両親と宗成先生呼んでくるわね」





そうやって声をかけるのは、
左近さんとかおりさんが不在の時に、
私のことを見てくれる、西野さん。




西野さんが出て行った後、
宗成先生と姿を見せた両親は、
不安そうにじっと私を憐れむように見てた。




「理佳ちゃん、ちょっとごめんね。
 冷たいよ」


そう言いながら、
聴診器をあてる宗成先生。


だけどその聴診器もちゃんと冷たくないように、
宗成先生の掌であたためられてあてられることを知ってる。




「落ち着いたかな……。

 お父さん、お母さん、
 心配かけましたね。

 理佳ちゃん、暫く観察は必要ですが
 ずっと一緒に闘ってきたお友達が亡くなったのに
 ショックを受けてしまったみたいですね」



そうやって、
宗成先生は両親に説明してた。



先生の口から出て来た言葉に、
私は元弥君の死を実感した。




だけど……涙は出ない。




元弥君は今……ずっと苦しかった病気から
痛みから、死と言う形で解放されて
元気に過ごしているんだから。



その旅立ちを悲しんじゃいけない。




元弥君は、
この場所を卒業していったんだから。






そうやって必死に言い聞かす、捩じれた思い。

歪んだ感情。






だけど……そうやって、
何処かに幸せを拠り所に見つけ出さなきゃ
前に進めないから。




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