君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
次の日、俺はアイツの泣き声で目が覚めた。
夜の間に戻ってきたらしいアイツは、
ベッドのなか、布団を被って泣いてた。
「おいっ、うっせぇって」
そうやって言いたいわけじゃないのに、
そんな言葉しか出てこない俺。
「今はまだ寝る時間だろ。
泣いてんじゃねぇよ」
そう言いながら、俺は自分のベッドから
アイツのベッドへと近寄った。
そっとアイツの髪に触れるように手を伸ばす。
静かに泣き続けるアイツの背中は震えてて、
それを少しでも和らげてやりたくて、
今度は背中をさすりはじめた。
「ごめん……。
でも……涙、止められないの。
けど、迷惑だよね。
ウザいよね。
邪魔だよね。
早く涙が止まれば、
迷惑かけずに済むのに……ね。
なんで涙って、
止まらなくなるんだろう。
泣いてどうなるってわけじゃないのに。
誰かを悲しませて、
不安にさせるだけだって
知ってるはずなのに……」
って泣いている今も周囲を
気にしてばかりのアイツ。
お前が泣いてる理由も俺は知ってる。
その涙は、元弥って奴の為に
流してる涙。
「別にウザいとか言ってねぇって。
チッ。
えっとー、何ていうか……
一人でコソコソ泣いてんじゃねぇ。
何があったかなんて、
まだ俺がわかるわけねぇ。
あったばかりだしな。
けど話す気があるなら聞いてやる」
アイツのベッドに腰掛けて、
アイツの背中をさすりながら
そうやって声をかけると、ベッドの中でアイツの体がゴソゴソと動く。
思わず絡み合う視線。
涙を流す至近距離のアイツの体を
思わずグイっと引き寄せて、抱きしめた。