君に奏でる夜想曲【Ansyalシリーズ『星空と君の手』外伝】
「これっ、元弥からの手紙……」
そう言って私の手に握らせる。
「読まないのか?」
問われる言葉に、
私は「読まないわけじゃなくて、読めないの」だと告げた。
昨日、あれだけ泣いているところを見せてしまったから、
この件で虚勢をはることもないと思ったから。
「開けろよ。
元弥は天国に行った。
だけど、お前はまだ生きてる。
この手紙の中に詰まってる元弥の気持ち
受け止めてやれって」
そんな託実くんの言葉に背中を押されるように、
私はゆっくりと、指先で開封作業をする。
シンプルな封筒の中から出て来たのは、
海のポストカードが一枚と、便箋三枚。
「海なんだな」
託実くんの問いかけに、
ただ私も頷いて、息を飲みながら、
手紙とポストカードを掴み取って胸元に引き寄せた。
「うん……。
元気になったら、
二人で海に遊びに行きたいねって
約束してたから……」
「ふーん。
んじゃ、手紙読めば?
泣き崩れたらまた胸くらいかしてやるよ」
興味があるのか、興味がないのか、
掴みどころがない存在。
ただ……うるさいだけの生意気な少年は、
私の中で優しい人に
確実に変化を遂げ始めてる。
その少年が背中を押してくれてる
そんな風にも思えて、
手に持った便箋を深呼吸の後、
ゆっくりと開封した。
その中には綴られた文章。