For Blue
先生のけだるい話しはすぐに街の歴史の話に戻った。

俺の耳にはその声はもう入って来なかった。


--あの魚はBleu de jardinにいるんだ。


その考えだけが頭の中を支配していた。


ふと教科書から目を放して、教室の窓の外を見遣った。


よく晴れた梅雨明けの空。
濃い青空に、絵に描いたような真っ白な入道雲が見えた。


雲に溶け込むように、透き通った球体が視界に入る。


微かに水の跳ねる音が聞こえた気がした。

ただの空耳だ。わかってる。

けど、


Bleu de jardin。


夏休みに入ったら、行こう。

いや、行かないといけないんだ。


ただの空耳。
ただの偶然。

この世界に奇跡や運命なんて存在しない。
あるのは自分のしてきた結果だけだ。

分かってる。


わかってる。



何かを信じたいと思う自分と、真面目ぶった自分がひしぎあっているような気分だった。
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