For Blue
--ドプン


窓にくっつけていた耳に聞き慣れない音が聞こえて目を覚ました。


目を開けて体を起こすと俺は息をのんだ。


車内は真っ青に染まっていた。


椅子も、荷物も、乗客も、全て海の底に沈んだようだった。


窓の外も同じ光景が広がっている。


音の正体は海の水。


ああ。
俺は飲み込んだ息をゆっくりと吐いた。


--Bleu de jardinに入ったんだ。


黒猫は、駅から空へ昇り、Bleu de jardinの海の底から港へと進んでいく。


その海の中で朝を迎えたんだ。


朝日を包み込んだ海が車内を青く照らしていたんだ。


俺は普通に生活をしていたらきっと見ることのなかった青色の空間を、ただじっと眺め続けていた。


不意に車内の壁で影が動いた。
誰かが起きたのかと思ったがそうではない。

もう一度、影が現れる。
今度はしっかりと捉える。


それは魚影によく似た形。

窓の方を振り返る。


青色の世界に一匹の魚。


宝石のような鱗が朝日を受けて
一枚一枚澄んだ光を作り出す。



あの日教科書で見た



ずっと夢で思い焦がれていた



青色の魚。
< 12 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop