For Blue
俺は口に出すべき言葉を見つけられず、
無言でそっと窓硝子に触れた。

指先にひんやりとした感触が伝わる。




幻だと言われても、硝子一枚を隔ててそこに存在している。



ようやく会えた。



その気持ちで胸がいっぱいだった。



涙が頬を伝う。


悲しかったり、悔しくて泣くことはあるが
嬉しくて泣くなんて初めてだ。


誰にも気付かれないようにひっそりと目をつぶり、瞼に溜まった涙を落とした。



こぼれ落ちた涙も、きっと青色を含んでいる。
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