For Blue
魚はゆったりと泳いでいたが、俺が見ているのに気がついたように
突然、勢いよく身を翻して海の中に溶けるように消えていった。

尾びれから巻き起こった水泡が、朝日に透けて白金のように輝いた。


俺はそのまま窓の外を見続けた。

黒猫が海面に近づいているのと、
時間が経過するにつれて
太陽の輝きが増しているのとで、景色はグラデーションのように
深い青から淡い青へと変化をしていく。



もうあの青色の魚が現れることは無かった。

その代わりに水面が近づいてくると
南国の花をちりばめたような、目の覚める色彩の小魚達が
乗客を誘うように窓に近づいたり踊るように尾びれを振った。


黒猫が水面に上がり始める。


窓から見える景色が水面を境界線にして、ゆっくりと空と海の二層へ変わる。

空は朝日に染められて橙色に輝く。
車内もだんだんと青色から橙色へと変わり、乗客たちも
それに比例するように起き出し、手荷物の整理をし始めた。


もうすぐ港につくのだろう。
< 14 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop