For Blue
何時間かぶりに黒猫の扉が開いた。

乗客は待ち望んでいたかのようにぞろぞろと列をなし
大荷物を運び出す。


俺も後に続こうと立ち上がりかけた。

肩から尻にかけてだるい痛みが走る。
長時間同じ体勢をとっていたせいで完全に体が固まってしまっていた。

ゆっくりと立ち上がり、ぐっと背中を反らして体を伸ばす。
ポキポキと体の内側から弾ける音がした。

隣に座っていた小母さんが肩を回しながら、そんな俺の姿を見て笑った。


黒猫を降りるときも小母さんとは一緒だった。

黒猫の出口と港には段差があるため、大きなトランクを
小柄な小母さんが降ろすのはかなりの重労働のように見えた。
俺は黒猫の出口からトランクを持ち上げて港へと降ろした。
俺も黒猫から降りると、小母さんは先に進んでいった商売人の乗客たちには続かずに待っていた。


「ありがとうね。道中気をつけて」


ポンと俺の腕を軽く叩きながら言った。


手から伝わるおおらかな優しさが嬉しかった。


去っていく小母さんの後ろ姿を見送りながら思う。
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