For Blue
現実を見なさい。


絵空事を信じてはいけないよ。


大人達の言うことは正しい。

子供が傷つかないように、道を間違えないように、
自分の過ちを踏まえて
忠告してくれている。


厳しい言葉は優しさだ。


それは分かっている。



小母さんの背中のその先を見上げた。


黒猫が停まる港から数メートル、明るい金色の格子と、エメラルドグリーンの装飾が優美な門から
人々はBleu de jardinへ入る。


朝日を反射する白亜の壁と、色とりどりの瓦屋根の家並み。

白が映える青々とした木々の葉。
水面に見た小魚達のように鮮やかな鳥が間を舞う。


道行く住民達の紗の衣服の端が輝いて靡く。


遠くから美しい弦楽器の音色が港まで届いてきた。


その全てを見下ろし、時間さえも包むように中央に佇む、真珠のように滑らかに輝く高層の建物群。


夢を球体に閉じ込めた世界。


外に出れば全て消える夢。


けれど--。



この感情は外に出たって消えない本物だ。
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