For Blue
「もう病気は大丈夫なの?」

「お陰様で。最近ではあるけど、ようやく自由に外を歩けるようになったんだ。で、あっちこっち回ってたらここに来るのがちょっと遅くなっちゃった……怒る?」


手を合わせて頭を下げながら、上目遣いであたしの様子を伺う。


「当たり前よ!bleu de jardineの住人ならいの一番にあたしの所に挨拶に来なさいよね!」


そう言ってあたしは、頬を膨らませてそっぽを向いて見せた。
すると彼は、そんなあたしを見て吹き出した。


「あたしが怒ってるのに笑うなんて失礼じゃない?」


ごめんごめんと言いながらも笑い続ける。本当に失礼!


「僕が入院する前に会った時って、レディは凄く大人の綺麗なお姉さんって感じだったからさ。そういう風に膨れると本当に子供みたいだなって」


彼は笑いながら弁解する。


大人の姿ーーそうね、確かに彼がまだ小さな時、あたしはそんな姿だったわ。


黒いストレートヘアーで、赤色のドレスを着て、今のあたしとは似てもにつかない色っぽい感じだったわね。


「仕方ないのよ、五年前のあのことがあったから……」


ああ、いけない。貴婦人たるもの、いかなると時も余裕のある振る舞いを心掛けないといけないのに、上手く流せない……。


「そっか……僕はその時のこと話でしか聞いてないけど、辛いこと思い出させちゃったね」

「いいのよ。気にしないで。あたし、今の姿も結構気に入ってるんだから」


笑顔を作って見せたけど、上手く笑えたかしら。
彼が安心したみたいに笑ったから大丈夫かしらね。
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