For Blue
さて、入港者も荷物も異常なし。

今日もあとはのんびり過ごせるわね。


ん?やだ、まだ一人ここを通ってない人がいたわ。

危ない危ない、ちょっと油断しちゃったじゃない。


若い男の子。まだ十代かしら。荷物がないから仕事で来たわけじゃなさそう。


珍しく観光客ってところかしら。

夏なのに肌の色は生白いし、細いし、インテリっぽく眼鏡なんてかけちゃって、あんまり観光て雰囲気はないけど?

まぁいいわ、あたしの見立てだと害はなさそうだし、bleu de jardineの第一印象はここで決まるものね、とびきりの笑顔で迎えてあげなくちゃね!




男の子が近づいて来て、あたしはゆっくりと自分が立っているbleu de jardineへと続く道を譲った。

そして、皆が可愛いって言ってくれるキラキラした笑顔で声をかける。


「bleu de jardineへようこそ」


……下から来た人達にはあたしの声は聞こえないし、姿はも見えないからあくまでも自己満って感じなんだけどね。

でも、あたしが声をかけると男の子は驚いた顔をしてこっちを向いた。

それから、あたしとあたしが寄りかかっている白金にエメラルドグリーンの装飾の施された門扉を見比べて、

ここにつくまでに取り出したガイドブックのような冊子とも見比べた。



変ね、どうしてあたしの姿が見えるのかしら。

まあ……見えてマズイことはないし、寧ろあたしの姿が拝めるなんて相当ラッキーなことなんじゃないかしら?


「港に立つ門扉は、その優雅な佇まいからレディゲート(貴婦人の門)と言われるって……門は確かに綺麗だけど、いるのは単なるガキじゃないか」
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