For Blue
歌が聴こえる。不思議な歌。

ここで聴こえる音は、私がたてる音と、この不思議な歌だけ。


『星の欠片の金平糖　ひとつ私にくれたなら
望むがままに歌いましょう　あなたの知りたい真実全て』


綺麗な声で弾むみたいに。まるで水面にはねる雫のよう。

私はこの歌が好き。この歌が聴こえると、少しだけ心が軽くなるの。
鳥かごの中にいるのは私だけじゃないみたいで嬉しくなるの。
誰が歌っているのかしら。

『星の欠片の金平糖』をあげたら教えてくれるのかな。

手を器みたいに丸く形を作る。

ふんわりと光を帯びて手の中に小さな金平糖が姿を現す。
今日は白と青とピンク色。
ころんと手の中で揺れる小さな星。


「・・・・・・星の欠片の金平糖　ひとつ私にくれたなら」


私も歌ってみた。それから一粒口に含む。

じんわりと口の中に甘さが広がる。手の中の残り２粒の金平糖がふわりと浮いて空を泳いで消えた。


「望むがままに歌いましょ」


歩きながら続きを歌った。
私の影を窓から差し込む月明かりが淡く象っている。


「あなたの知りたい真実全て」

『あなたの知りたい真実全て』


不思議な声が一緒に歌った。


『けれど決して言えないことがあるの』


続きを歌うのは不思議な声だけ。


『愛おしい人との約束　この世界の始まりの歌』


金平糖はワンフレーズ一緒に歌った分だと言っているように声は歌うと消えていった。
いつもそう。真実は教えてくれない。


「・・・・・・この世界の始まり」


私のこの世界の始まりはいつからなの。
終わりはいつか、やってくるのかな。
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