For Blue
気がついたら、私は走り出していた。

生まれてはじめて私は走っている。


足の裏、土を踏んで少し痛い。その痛みさえ、今は嬉しくて。

包むように吹き付ける風が気持ちいい。


息が弾む。体も弾む。
その度に体は必死に空気を取り込むのが分かる。


私の中に『外』が巡り始める。


足が思うように進まない。もどかしい。

私には羽根がある。――けど、それは使わない。


本当は分かっていたの。


この羽根は、ううん、羽根だけじゃない。
星の金平糖だって、鳥籠の中のもの全て、本当は幻だってこと。


幻なんていらない。
私は、私の足で走っていく。


そう心に決めたら、急に背中が軽くなった。
走る私の視界いっぱいに真っ白な羽が舞った。
幻想の、私の羽根が散っている。


< 34 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop