For Blue
鳥籠のあった高台の丘。
途中まで駆けて、私は人の姿を見つけた。

初めて見る、鏡に写した自分以外の人。


――この人だ。


体の奥からどきどきが溢れ出てしまいそうで、私は立ち止まって息を止めた。
ずっと、ずっと、私が探していた心の欠片。

私の心は満たされて、その気持ちはやがて瞳から零れて涙に変わった。
嬉しいのに泣いていた。


彼も私を見つけた。


銀縁の眼鏡の奥の瞳が、驚いたように見開かれた。
けれど、その表情は直ぐに微笑みへと変わった。
彼も、分かっていたんだ。


私達は駆け寄って、抱き合った。


言葉なんていらない。

私達は初めから知っていたんだ。

顔を見合わせて笑いあった。



やっと出会えた。

待っていた。

愛おしい人。



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