For Blue
というのも、Bleu de jardinのものや、景色なんかを写した写真や動画、スケッチした絵でさえ、あらゆるものが一歩外に出れば
幻のようにたちまちに消えてしまう。

幻想郷と呼ばれるのはそのためだ。


どれだけ美しいものを見ても、
楽しいことがあっても伝えられるのは口でだけ。

嘘をつこうと思えばいくらでもつける。
例え本当のことだとしても疑われる。


そんな何も生み出さないものに何の意味があるのだろうか。


そうして人々の心は離れていき、この街は栄えるよりもずっと早く
もとの、ひょっとするとそれ以下のひっそりとした、何もない小さな港町へと成り下がった。



「手に入れても消えてしまうものなんて、無いのと同じ。」

「何も生み出さない夢なんてみるくらいなら、今の生活を豊にすることを考えなさい。」


この街の大人は皆、このエピソードと一緒に締めの言葉に決まって口を揃えて言う。



きっと、あの空に浮かぶ場所のような絵空事を
本気にして生きることのないように釘を刺しているつもりなのだろう。

でも大丈夫。


俺達は、大人達が考えている以上に現実が見えている。


大人達が夢を見たり破れたりした結果が、この何もない街だ。


こんなものを見せられ続けたら、嫌でも夢なんて見たくなくなるんだよ。
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