For Blue
港まであともう少しの所で脇道から大通りへと出た。

港からはまだ沢山の観光客が広場へと向かう人波を作っている。
リオンは少しうんざりしながら流れに逆らうように港へと向かう。


――普段だったら港に出るまでこんな苦労はしないのに。


しかし、リオンは自身の否定を打ち消す。今日でなければいけないのだ、と。

少し前方に港とbleu de jardineを分ける門が見えてきた。
漆黒の格子に金細工と深紅の宝石が散りばめられた美しい門扉。
その門に寄りかかるようにして、行き交う人々を見つめる女性が一人。

漆黒の髪、深紅のドレス。
彼女こそが港の門番のレディ。

僅かな不審をすぐに見抜く彼女によって、bleu de jardineの平和は保たれていると言っても過言ではない。

bleu de jardineから出るという発想のないはずの住人が、人のまばらな時に彼女の前を通れば、すぐに咎められるのは目に見えていた。

だからこそ、彼女の視線を少しでも分散出きる様にと、沢山の人が行き交うこの日をリオンは選んだ。
< 49 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop