For Blue
「あんた、高校生?
Bleu de jardinに行くのかい?」


隣の座席に座った小母さんが無遠慮に尋ねてきた。


「あぁ……はい、そうです、けど」


多分、俺の制服姿や手荷物が網棚に載せた小さな肩掛けの鞄一つだったから聞いたんだろう。

対して小母さんは膝の上に抱えるボストンバッグに、座席横に置いた大きなトランク。
更にその上に大きな風呂敷包みと物凄い量の荷物だった。

黒猫の乗客ほとんどが、小母さんと同じくらい大荷物を持って乗り込んでいる。

俺みたいな手荷物一つで乗っている奴はかなり少なくて浮く。

なぜなら観光が主要ではなくなった今、Bleu de jardinに行くのは商売人がほとんどだからだ。

食料や日用品、装飾品に至るまで品物は様々で、彼等はBleu de jardinに住む人々の必要とするものを売りに行っている。

交通手段が黒猫しかないから商品は自分達で持って行くしかなく、結果どの人もこんな大荷物になっている。


この混み合ってる車内も、ひょっとすると荷物が少なかったらもう少し空くのかもしれない。

因みに嫌らしい話、売り買いに使われている貨幣は俺達が使ってるものが流通してるだけだから
Bleu de jardinから持って出ても消えたりしない。

まぁ、だから観光客がほとんどいなくなっても未だに商売が成立してるんだけどな。
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