For Blue
初めて見る、木調の壁と床の車内に歓声をあげる隙もなく、視界は急激に下降した。


自分の身に何が起こったのか認識し始めた時には、リオンは海の中に落とされていた。


そこが海の中だと気が付いたのは、目の前を青白い光が作り出した魚影が通りすぎたからだ。
しかし、そこからまた瞬きよりも一瞬で、リオンの体は落ちていく。


確かに海の中にいるはずなのに、まるでそこには水など存在しないかのように、何の抵抗もなかった。


程なく、急激な下降が和らいだと同時に、リオンは夜風に激しく吹き付けられた。


bleu de jardineでは嗅いだことのない風の匂い。
頭上にはbleu de jardineの海の底。


bleu de jardineから放り出されたのだと、リオンの思考がようやく答えに行き着いた。

下を見てみると、そこには真っ暗な水面が広がっていた。
bleu de jardineの海とは違う色。
引き込まれそうな深い闇の色にリオンは恐怖を覚える。


――恐い。

こんな海、僕は知らない。


横を向くと水平線を彩るように、夜景が輝いていた。




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