For Blue
街の港から更に海へとせり出した、色褪せた樹脂製のベンチが二つ並べて置かれただけの簡素で小さな駅。
駅名もない。
海の上に作られたステイションへと続く道には何の案内表示もない。
その道を真っ直ぐ進んで行くと改札の手前に堅牢な鉄柵が建てられ、誰も入れないようになっている。
『街』なんて、過去の繁栄にすがって住人達が言っているだけで、ここに住んでいる人の数は建ち並ぶ家よりもずっと少ないし、今更観光でここに来ようなんて人も滅多にいない。
こんなところ、人の出入りが出来ないようにしたところで入ろうとする人そのものがいないんだから意味のないものだと思う。
私はさっき母に言ったようにbleu de jardineの写真が撮りたくて、何も遮るものなく見えるこの場所によく来ている。
ここへ通うようになって数年、撮影している間に邪魔が入ったことはない。
いかにあの柵が無用の長物かと言うことが分かってしまう。
因みにあの柵は夜にだけ開かれる。
夜になると、一日に一本だけ発車する『黒猫』と呼ばれる真っ黒な蒸気機関車のような列車がbleu de jardineから音もなくステイションにやって来て、そしてまた人を乗せて戻っていく。
その列車の到着に合わせてだ。
勿論、列車に乗ってbleu de jardineに行くのは観光客ではなくて、私の母みたいに品物を売りに行く人達がほとんど。
昔は沢山の観光客がbleu de jardineに夢を見て、こぞって黒猫に乗って向かっていたらしい。
けれどそこには本当に『夢』しかなくて、実体のないものに皆ががっかりして次第に離れていった。
残されたのは私たちのいる下の世界から持ち込まれたわずかなお金の流通だけ。
今はそんな夢の残骸を拾うようにものを売りに行く人達しか向かわない場所。
それが今の幻想郷bleu de jardine。
だから、そんな所に今更行こうなんて思わない。
やっと分かったんだ。
あの場所は、外から眺めるのが一番良いってことが。
駅名もない。
海の上に作られたステイションへと続く道には何の案内表示もない。
その道を真っ直ぐ進んで行くと改札の手前に堅牢な鉄柵が建てられ、誰も入れないようになっている。
『街』なんて、過去の繁栄にすがって住人達が言っているだけで、ここに住んでいる人の数は建ち並ぶ家よりもずっと少ないし、今更観光でここに来ようなんて人も滅多にいない。
こんなところ、人の出入りが出来ないようにしたところで入ろうとする人そのものがいないんだから意味のないものだと思う。
私はさっき母に言ったようにbleu de jardineの写真が撮りたくて、何も遮るものなく見えるこの場所によく来ている。
ここへ通うようになって数年、撮影している間に邪魔が入ったことはない。
いかにあの柵が無用の長物かと言うことが分かってしまう。
因みにあの柵は夜にだけ開かれる。
夜になると、一日に一本だけ発車する『黒猫』と呼ばれる真っ黒な蒸気機関車のような列車がbleu de jardineから音もなくステイションにやって来て、そしてまた人を乗せて戻っていく。
その列車の到着に合わせてだ。
勿論、列車に乗ってbleu de jardineに行くのは観光客ではなくて、私の母みたいに品物を売りに行く人達がほとんど。
昔は沢山の観光客がbleu de jardineに夢を見て、こぞって黒猫に乗って向かっていたらしい。
けれどそこには本当に『夢』しかなくて、実体のないものに皆ががっかりして次第に離れていった。
残されたのは私たちのいる下の世界から持ち込まれたわずかなお金の流通だけ。
今はそんな夢の残骸を拾うようにものを売りに行く人達しか向かわない場所。
それが今の幻想郷bleu de jardine。
だから、そんな所に今更行こうなんて思わない。
やっと分かったんだ。
あの場所は、外から眺めるのが一番良いってことが。