For Blue
レディはbleu de jardineの門番。

黒猫でやって来るほとんどの人はその姿に気が付かないけれど、私は何回も来ているからか、ここの住人と仲が良いからなのか、レディの姿を見ることが出来た。


豪華な金細工と真っ赤な宝石をあしらった黒い格子の大きな門扉。

レディはいつもその装飾に劣らない美しい姿で自信たっぷりに立っていた。


門扉に近づくといつも通りレディはそこにいたけれど、門扉の端にしゃがみ込んでいて、その表情は見ているこちらが悲しくなるほどに憔悴しきっていた。

驚いて駆け寄ると、気が付いたレディは私の顔を見ると目に大粒の涙を浮かべた。


「マナ……ごめんなさい」


消え入りそうな震える声でレディが言った。


「私が彼を止めることが出来なかったから、こんなことに……」


私にはレディの言葉の意味が分からなかった。
とにかくレディが泣いている姿が痛ましくて泣き止んでほしいと思っていた。

困惑している私に気が付くと「よく聞いて」と、レディは不意に私を抱きしめた。
黒髪の間から覗く、鮮やかな青色のトパーズの耳飾りが印象に残った。

そして耳元で涙の意味を告げた。


彼は消えた、と。


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