For Blue
街へ降りるために黒猫に乗ろうとして、そのままbleu de jardineから落ちて消えてしまったのだと。

その不幸な出来事のためにその年の満月祭は二日目以降は中止とすることが決められた。


私はにわかには信じられず、その日はそのまま街へと戻ったけれど、心が落ち着かなくて暫く駅と街を繋ぐ道の上を行ったり来たりしていた。

体に上手く力が入らなくて、痺れたような感覚だった。

だけど、立ち止まったら自分がレディの言葉を受け入れてしまいそうで怖くて、じっとはしていられなかった。


何往復かした時に、不意に足元に何かが当たった音がした。

道の縁からその音は繰り返し聞こえて、近寄ってみると波が運んできた小さなガラス瓶が水面の揺らぎに合わせて道の縁に擦りつけられていた。

薄い青色のいびつな小瓶。私にはそれに見覚えがあった。

手を伸ばして拾い上げると確信に変わった。
それは私が昔彼にあげた、私が作った小瓶。

しっかりと蓋は閉じられていて、中には一通の手紙が入っているのが見えた。
その手紙のデザインも私は知っていた。
それも私のあげたものだったから。


恐る恐るふたを開けて手紙を取り出す。
封を開けて便箋を取り出して広げるとそこには何も書かれていない白紙だけがあった。

それが何を意味するか、私にはそれでもう十分だった。

Bleu de jardineのものは全てが幻。



レディが言っていたことは真実だった。

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