For Blue
その日を境に私がbleu de jardineに行くことはなくなり、話題にも出さなくなった。


何があったのか、母には喋らなかったけど母は母なりに感じ取ってくれてbleu de jardineの話を私の前ではしなくなったし、私が仕事に行っている間に出かけるようになった。


それから私の生活の中からbleu de jardineは姿を消した。

空に浮かぶその姿を見ないように俯いて歩き、首の角度が大きくなるほどに私はそれまで以上に仕事に没頭していった。

お気に入りのカメラの存在を忘れるくらいに。


そしてある日、私はそれまでの過労が祟って会社で倒れた。

運び込まれた病院で目を覚まして最初に見たのは窓の向こうにある、ずっと見ないようにしていた青空の中のbleu de jardineだった。

海の上に小さな地球が浮かんでいるようにも見えて、ただただ綺麗だった。

私はまだ少し朦朧とする意識の中で、何も考えずにベッドサイドに置かれていた自分の携帯電話のカメラを向けた。

ピントを合わせてファンクションキーを押して撮影をする。

嘘っぽいシャッター音が鳴ったところではたと思った。
あれは幻なのだから写真には写らないはずだと。
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