For Blue
けれど携帯電話の画面には小さいけれどはっきりと美しい青色の球体が写っていた。


――ここからなら、消えないのね。


画面を見たまま私は泣いていた。

外からなら、あの小さな世界を残すことが出来るのだ。


Bleu de jardienは幻となって消えていく世界。
だけどここから見えるものは現実で、私の手の中に確かにある。

私が忘れてしまえば、ここでは存在していたことでさえ無かったことになってしまう彼の事も、現実だったと証明するように画面の中のbleu de jardineは優しい青色に輝いていた。

あの日拾ったガラス瓶と同じ青色。


――彼も、彼の愛情も、本物だった。


カメラを買っていたことも思い出して退院してからは、時間が出来るとbleu de jardineの写真を撮るようになった。

今まで何枚の写真を撮っただろう。

ひょっとしたら過去を引きずっているように周りからは見えるかもしれない。
だけどそういう訳じゃなくて、私には写真が一枚増えるごとに自分だけの宝物が増えていく感覚になっている。


未練じゃない。
ただ、大切にしたい宝物なんだ。

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