For Blue
俺は再び窓の景色に目を向けた。
小母さんは、もう話しかけてこなかった。


窓の外には星空が見える。
街の明かりが空を照らすから、プラネタリウムで映されるような膨大な星が見えるわけではないけれど、
補うように黒猫の足元で、明かりは花火の残光のようにちらちらと輝くから、それなりに美しい。

こうやって見下ろすと俺がいた街は、寂れてたって案外人が生活してるんだって感心してしまう。



これから黒猫は、一晩かけてゆっくりとBleu de jardinを目指す。



星空から目線を外すと、窓硝子に写った自分の顔が目に入る。

夜空の海に銀色の眼鏡フレームが浮いて見えた。

自分で言うのも何だけど、疲れた顔をしている。

こんなこと、周りに言ったらまだ学生なのにって笑い飛ばされるんだろうな。

学生は学生なりに疲れることがそれなりにあるのに。


そう、そんな学生なりの疲れがピークに達するとき、
そして、ひどく落ち込むことがあった夜に必ず見る夢がある。


どこまでも澄んだ水の中、一匹の魚が泳ぐ光景。

宝石のように美しい魚。
空から落ちてくる金平糖を食べては鮮やかな歌を唄う。
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