For Blue
自室の壁際、窓越しに港を見ながら真奈美は昨日の事を心の中で反芻していた。

手のひらにはbleu de jardineの写真。

そこに視線を落とすことなく、ただぼんやりと窓の外を眺める。


どこにでもあるような、何の変哲もない街並み。
頭上あった青色の世界は見えない。

真奈美は、もう何度目かのため息を漏らした。



昨日、blue de jardineが街に降ってきた。

海が溢れ出して街の上空にどんどん広がり、真奈美の目の前に迫ってきた。

海と一緒に見たのは極彩色の小さな魚がもがく姿と、砂のようにボロボロと呆気なく崩れていく、bleu de jardineの象徴のようだった白亜の時計塔。

そして、誰もが美しいと絶賛していた明るい金色の格子とエメラルドの装飾の門、レディ・ゲートのひしゃげた無残な形。


美しいと思っていた海から覗いた惨状に終末を悟り、ようやく真奈美の心の中で恐怖が勝った。
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