For Blue
驚きはしたが納得はしていた。

Bleu de jardineは幻。
いくら本物のように見えても、そこから一歩外に出ればたちまちに消えてしまうものなのだから、と。

そして翌朝、真奈美は自室から空を見て、もう何もないことを改めて目の当たりにする。


――Bleu de jardineが消滅したことは現実なんだ。


ひどい喪失感があった。

もうbleu de jardineを写真ですら残すことも叶わない。

この世界ではもう幻でさえも夢を見ることは出来ないのか、と。


どれほど眺めても目の前にはよく晴れた青空しか見えず、それでも繰り返し見る夢のようにまた現れるのではないかという淡い期待を捨てることも出来ず、真奈美は窓辺から動けずにいた。


それからしばらく、再びついた溜め息に混ざって、背後から何かが転がるような音が聞こえた。


真奈美は驚いて振り向いたが、そこにはいつもの自分の部屋の光景が広がるだけで、音の発生源は見当たらなかった。

気のせいかとまた窓辺に視線を戻そうとして、もう一度背後、bleu de jardineを撮った写真と、彼にあげたガラスの小瓶が飾ってある棚の異変に気が付いて真奈美は動いた。


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