For Blue
『お互いに悲しいのは、もう終わりにしよう。決めたんだ。僕が、君に会いに行くよ』


一歩踏み出すごとに増す、体を巡る血の速度が体温を上げ、鼓動を早く打ち鳴らす。

浅い呼吸を何度も繰り返しながら、真奈美はただただ前だけを見て走った。

手に力がこもり、握られた便箋はくしゃりと力なく真奈美の手の中に収まっている。


『今まで君に沢山会いに来てもらって、沢山寂しい思いをさせた』


――寂しかった。寂しかったよ。


瞼に涙が溢れて視界がぼやけた。
それを力任せに拭って、走り続ける。


――港で小瓶を見つけたあの日から、君の気持ちはずっと私のそばにあったんだね。


本当は、今すぐに立ち止まって声をあげて泣きたかった。
叶うはずの無かった願いを抱きしめるように。


『今度は僕が会いに行く番。寂しい思いはもうさせないよ』


ちらりと手紙と一緒に握っていた耳飾を見る。
脳裏にはあの日のレディの泣き顔が浮かんだ。

それでも走るのを止めなかった。
目指したのはいつもの港。




『僕の想いは幻じゃない』


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