For Blue
「幸せにね」
ステイションの入り口の柵に寄りかかりながらリオンと真奈美の姿を眺める少女が呟いた。
金色の巻き毛とレースをふんだんにあしらわれたドレスが海風に緩やかに靡く。
あどけない少女のような姿とは裏腹に、エメラルドのぱっちりとした瞳を穏やかに細めて二人を見守っていた。
手には、真奈美の持っているものと同じトパーズの耳飾り。
ふと、少し強い風が吹いて、少女は何かを思い出したかのように、もたれていた門から身を起こすと二人に背を向けた。
そしてもう一度、名残惜しそうに二人を振り返ってから門と真正面に向き合う。
黒猫の行き来がなくなって不要となったステイションへ続く門は固く閉ざされている。
この先も、開くことはもうないのだろう。
少女はためらうことなく門の柵に近づき、何の抵抗も無くすり抜ける。
門を抜けて、華奢な足が片方アスファルトに着地をすると音は無く、霞(かすみ)のように
輪郭がぼやけた。
もう片方の足も着地をする前に形をなくし、それでも歩みを止めない少女の姿はゆっくりと薄れ、やがて真昼の陽光のように明るい金色の毛先さえも残さずに、穏やかな風の中に溶け込んでいった。
ステイションの入り口の柵に寄りかかりながらリオンと真奈美の姿を眺める少女が呟いた。
金色の巻き毛とレースをふんだんにあしらわれたドレスが海風に緩やかに靡く。
あどけない少女のような姿とは裏腹に、エメラルドのぱっちりとした瞳を穏やかに細めて二人を見守っていた。
手には、真奈美の持っているものと同じトパーズの耳飾り。
ふと、少し強い風が吹いて、少女は何かを思い出したかのように、もたれていた門から身を起こすと二人に背を向けた。
そしてもう一度、名残惜しそうに二人を振り返ってから門と真正面に向き合う。
黒猫の行き来がなくなって不要となったステイションへ続く門は固く閉ざされている。
この先も、開くことはもうないのだろう。
少女はためらうことなく門の柵に近づき、何の抵抗も無くすり抜ける。
門を抜けて、華奢な足が片方アスファルトに着地をすると音は無く、霞(かすみ)のように
輪郭がぼやけた。
もう片方の足も着地をする前に形をなくし、それでも歩みを止めない少女の姿はゆっくりと薄れ、やがて真昼の陽光のように明るい金色の毛先さえも残さずに、穏やかな風の中に溶け込んでいった。