For Blue
海岸に沿って作られた防波堤の上を少年と少女がゆっくりと歩いていた。



少年は靴下で。
少女は素足でぶかぶかの靴を履いて。


「寒い?」


少女の前を歩いていた少年が振り返って尋ねた。

少女は微笑んで首を横に振る。

傾きかけた晩夏の日差しが、少女の白銀の髪の動きに合わせてキラキラと踊る。


街は、少年がbleu de jardineに行った日から比べてずっと涼しい気候になっていた。

向こうでは少女がノースリーブのワンピースでも気にならない程だった。

何より裸足では、ここはとてもじゃないが歩ける状態ではなかった。


少年が貸した靴は少女には大きく、慎重に歩かなければ脱げてしまうため、二人の歩みは自然とゆっくりになる。

それでも気が付くと少年の方が前を行ってしまうため、こうして度々振り返っては、少年は少女が追いつくのを待っていた。

目の前に到着した少女が、不意に視線を海の方へと移す。
つられるように少年も海の方を見た。

日差しを眩しく反射させるばかりの穏やかな紺碧の海。

防波堤から見えるのは、ただそれだけだった。
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