For Blue
「……本当に、何もなくなっちゃったんだね」

「うん」


感慨深げに言った少年の言葉に少女も小さく返事をした。


二人は、ほんの少し前まで空に浮かんでいたbleu de jardineにいた。

それが一瞬で、全てこの街の海に溶けるように消えた。


異変が起こったのは二人が出会ってすぐのことだった。


少女はbleu de jardineの丘から少年を目掛けた走ってきた。
太陽のように眩く輝く笑顔で、天使の羽根を散らして。

胸が高鳴ったのは少女の美しさだけではなかった。

少女を見た途端、夢で見ていた青色の魚を見つけたときと同じ、懐かしい愛しさを感じた。

少年はその気持ちを言葉にして少女に送った。


――やっと見つけた。


そして、少女を受け止めた次の瞬間だった。

崩れていくbleu de jardine。
自分の足場も失い、少年は下へ落ちながら全ての終焉を脳裏に描いていた。


しかし、全ては色とりどりの金平糖に変わって街を埋め尽くし、すぐにそれすらも認識する間もなく静かに消えていった。

落下していたはずの二人は、気が付いたら何故かステイションと向い合わせの防波堤の上に着地していた。

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