For Blue
あの魚の正体を知ったのは
まさかの授業中だった。


つまらないものの頂点に君臨するような「学校のお勉強」に教えられるなんて、夢にも思わなかった。

あまりにびっくりして、その時は柄にもなく、勉強はちゃんとしておいたほうがいいなんて思い直してしまった。

あくまでもその時は、だけど。


あの世界中の青色を集めたような魚は深海魚だった。


俺は信じられなくて、何度も教科書のその部分を繰り返し目で追った。


深海魚があんなに美しくて鮮やかなはずないだろう。光が届かない世界には色彩は必要ないはずなんだから。


退屈な授業内容が、俺の目が追う部分に追いついた。


けだるそうに先生は教科書を読み進める。


「……これは、Bleu de jardinの海の底に住むと言われてる魚。
まぁ、あの場所のものは何も残らないから、誰かが帰ってきてから記憶を辿って描いたんだろう。」


Bleu de jardin……幻ばかりの何の役にもたたない場所。


先生の話しを聞くまで、自分の街の近くそれがあったことさえ忘れていた。

その時まではそれくらい興味のない場所だった。


強いて言うなら、地域史の一環で取り上げられる項目。それくらいの認識でしかない。
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