溶けたクラゲはどこへ向かうか

海の約束まであと二日と迫った夕方の日、家に茜から電話がかかってきた。

"まゆみが行方不明"

茜からそれを聞くまで随分と時間がかかった、それほどまでに彼女は取り乱していて泣きながら俺に電話を掛けたのだ。

(まゆみが、いない…?)

最初に電話をとった妹の汐里が俺を心配そうにリビングから見つめている。
共働きの家には俺と、まだ小学校に入ったばかりの汐里しかいない。俺は誰が来ても鍵を開けるなと汐里に強く忠告すると、家を飛び出した。

場所は、これから二日後に行く予定の海。
外はさっきまで晴れていたはずなのにどしゃ降りの雨。きっと、こんな天気の中、まゆみは泳いでいて波に足をとられて…

(あいつは、なんでこんな馬鹿なんだ!)


"泳げるようになったらかき氷奢ってもらうからね!"

「!」

ふと、こないだしたそんな約束を思い出して。
ああ、もしかしてまゆみが遭難したのは

(俺の、…)

そこまで考えたら怖くなって、俺は考えることをやめた。


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