唇が、覚えてるから
第1章
白衣の天使
「例の男の子、もう駄目らしいね」
「あー、飲酒運転だったっていうじゃん。テレビでも大きく報道してたよ」
「本当に気の毒。何歳だっけ?」
「確か高3って言ってた」
「私達とタメじゃん!」
「でも……もしかしたら植物状態になるかもしれないって。先生達が話してるの聞いちゃった」
「そうなの!?それもそれで辛いよね……」
「彼女いたりしたのかな」
「私だったら耐えられないよ……」
朝のロッカールーム。
今朝一番の話題は、3日前に交通事故に遭い、重体になっている男の子の話。
飲酒運転の車に突っこまれて、病院に運ばれた時はもう意識がなかったらしい。
「歩道歩いててはねられるんじゃ、たまったもんじゃないよね」
「うん。まだまだやりたいこともあったはずだし」
「"明日のことは分かんない。今を一生懸命生きろ"…ってことか」
「儚いよねぇ……命って……」