唇が、覚えてるから

一度外へ出て、中山さんの息子さんのへ面会として堂々と入口から入ろう。

面会なんて出来ないかもしれないけど、行動を起こさずにはいられなかった。


けれど。

その足を止めたのは、


「琴羽」


……祐樹だった。

職員通用門の柱の影に、いつかのように佇んでいたのだ。


「祐樹っ……?」

「話が……あるんだ」


会うのは、医者になる夢を諦めたと放った、あの日以来───。
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