唇が、覚えてるから
第3章
合コン
「ただいまー」
今日も少し祐樹とお喋りしてから帰ると、
「毎日毎日、一体何してるの?」
「怪しいよねー、最近、琴羽もオシャレに気を遣うようになったし!」
「そうそう、ロッカールームでグロスつけてるの見た!」
「ほんと?患者さんに会いに行くのに、グロスは必要ないでしょ!?」
「もしかして患者さんて、男!?」
待っていたのは、真理と希美からの冷やかしめいた質問だった。
バレちゃった……か。
遅かれ早かれ2人には話そうと思っていたからちょうどよかった。
「もーもーもー!分かった!言うから!」
2人には、ここ最近先に帰ってもらっていた。
理由は、病棟の患者さんとお話したいからってことにしていたけれど……。
その割には、ロッカーでグロスをつけたり身だしなみに気をつかったりして。
鋭い2人。
ごまかせるはずがなかった。