唇が、覚えてるから

樟大附の生徒だと伝えると、2人の興奮はさらに高まる。


「樟大附なんて超エリートじゃん!ねぇ、彼の友達紹介してもらってよ~」

「仕留めた魚はデカイよ。絶対に捕まえとくのよっ!」


よく意味が分からないけど、2人は喜んでいた。

私はそれが嬉しかった。


明日も朝から実習だというのに、修学旅行の夜並みに恋バナで盛り上がった。

一番楽しかったのは私かもしれない。

友達の恋バナを聞くのとはちょっと違う。

自分自身の恋バナってこんなに楽しいんだ。

自分の喜びを共有してもらう喜びも初めて知った夜だった。


……いつか告白しよう。

そんな勇気もわいてきたんだ。
< 112 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop