唇が、覚えてるから
樟大附の生徒だと伝えると、2人の興奮はさらに高まる。
「樟大附なんて超エリートじゃん!ねぇ、彼の友達紹介してもらってよ~」
「仕留めた魚はデカイよ。絶対に捕まえとくのよっ!」
よく意味が分からないけど、2人は喜んでいた。
私はそれが嬉しかった。
明日も朝から実習だというのに、修学旅行の夜並みに恋バナで盛り上がった。
一番楽しかったのは私かもしれない。
友達の恋バナを聞くのとはちょっと違う。
自分自身の恋バナってこんなに楽しいんだ。
自分の喜びを共有してもらう喜びも初めて知った夜だった。
……いつか告白しよう。
そんな勇気もわいてきたんだ。