唇が、覚えてるから

「………」


でもここで動揺しても、墓穴を掘るだけだから何食わぬ顔して言った。


「ちょ、ちょっとした知り合いなのっ……」


喉がカラカラになって、目の前にあったドリンクをグイグイ喉に流し込む。


まったくもう、こんな所で希美。

爆弾発言もいいところだよ!


本人が来てないのに話題にするなんて、ただじゃおかないんだからっ。

軽く睨みながら、コップの中身を空にする。


「琴羽が言うにはかなりのイケメンだっていうから、私もちょっと会いたかったなーなんて。彼も医学部コースだって聞いてたし、ひょっとしたら今日来るかもって思ってたの」


希美っ。

やめてよ……。

私の気なんて知りもしないで、ひたすら祐樹の話題を続ける希美に心の中でストップをかける。
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