唇が、覚えてるから

なんて言えばいいんだろう。

海翔君と祐樹の交友関係もわからないし、変に嘘つくのもマズイかもしれない。

私と祐樹はおかしな仲でもないし、正直に言ったほうが無難だと思った。


「一ヶ月くらい前に実習先の病院で知り会って……。えっと…知り合いのお見舞いに来てたとかで…」

「……」

「少し喋ったりする仲なの……」


毎日会っているという余計な報告はしないでおいた。

……でも。


「海翔……君?」


真顔で黙ったままの海翔君を不思議に思った。

自分から聞いて来たのに、そんな反応なんて。


「どうか……した?」

「……えっ?ああっ、ごめん。俺、アイツとはあんま親しくないけど、琴羽ちゃんが知ってるなんて言ったらなんか妬けてきてさ」


ははっ、って笑う顔もどこかわざとらしくて。

胸に引っ掛かりを覚えたとき。
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