唇が、覚えてるから
一人で悶々としていると
「今度、デートしよう」
突然祐樹が言った。
「デ、デート!?」
声がひっくり返ってしまった。
デートって、その。
恋人同士がするお出かけのことだよね……?
私の知識では、そう。
「嫌ならいいけど」
「ううんっ!嫌じゃないっ!するするっ!」
取り消されたら困るし、力を入れて言ったらものすごく笑われた。
「じゃあ、しよう」
「………うん」
バクバクバクバク……
心臓は鳴りっぱなし。
どういう心境の変化……?
デートって、どこ行くんだろう……。
映画……?遊園地……?
高校生がしそうなデートを頭に思い描いていると。
「琴羽の地元に行ってみたい」
突拍子もない提案にまた驚いた。