唇が、覚えてるから
待ち合わせの駅に15分前に着くと、まだ祐樹は来ていなかった。
さすがに早かったようだ。
これならあと5分髪をブローしてたら良かったかもしれない。
後悔しながら鏡を出して、前髪をチェックしていると……
「お待たせ!」
約束の時間より少し前に、祐樹はやって来た。
「……っ!」
思わず息を飲む。
雨なのに、祐樹の周りだけ日が当たってるみたい。
キラキラしていて、いつもの何倍もかっこいい。
いつもナチュラルな髪の毛は、珍しくワックスで立たせていた。
祐樹も、私とのデートだからオシャレして来てくれたの……?
そうだとしたら、すごく嬉しい。