唇が、覚えてるから
「そう、その笑顔」
「えっ……」
「琴羽が笑ってるだけで、いつの間にか誰かを幸せにしてることがあるんだ」
祐樹が私の髪の毛を、手のひらで掬った。
指先が、軽く頬に触れる。
───トクン。
祐樹の目が優しくて。
祐樹の温かさが体中に伝わって。
「祐樹、好き……」
私の中での祐樹への好きが溢れすぎて。
一人で抱えるにはもう苦しくて。
祐樹の手が私に触れたとき。
大好きな海の前で。
大好きな祐樹の前で。
私は気持ちに嘘がつけなかったんだ。