唇が、覚えてるから
キスはしてくれたけど、正式に付き合おうという話になったわけじゃない。
……あのキスが返事って思っていいのかな。
……男の子ってそういうものなんだろうか。
祐樹の心を探るように横顔をちらりと覗く。
「……」
……エスパーでもないし、分かるわけないか。
だけど、キスの時も愛おしそうに私の目を見てくれた。
自惚れるわけじゃないけど、これで好きじゃない…なんて言われたら、絶対人間不信になるよ。
でも、確認する勇気もないし……。
そうこうしていると、もう寮はすぐそこまでに来ていた。
一人であれこれ考えてて気づかなかったけど、そういえばさっきからお互いに無言。
祐樹はずっと黙ったまま前を向いて歩いている。
やっぱり疲れたのかな……。
あんなド田舎を歩きまくって……。