唇が、覚えてるから

先輩は、私の突然の乱入にとても驚いたようだったけれど。


「そうなの。離婚してるから姓は違うけど、ハセガワユウキ君って言ってね、頭のいい、すごくしっかりした息子さんだったの」


そう、教えてくれた。



ハセガワ……ユウキ……?



思考が一旦停止する。


中山さんの息子さんの名前が。

……ハセガワユウキ……?


ユウキ……。


祐樹……。



…………え。




「五十嵐さん……?」

「……す、すみませんっ。お先に失礼しますっ…」


知りすぎたその名前に困惑しながら、日誌を閉じると逃げるようにその場を後にした。
< 177 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop