唇が、覚えてるから
「…っ。そうですよ。ただの実習生ですよ。だから病院内のことなんて分からなくて当然です!」
でも面倒くさいからそれについては反論しなかった。
その代わり、分からないれっきとした理由を並べると、
「うわっ、開き直ったよ」
彼は目を見開いて、鼻で笑った。
そして極めつけに
「使えねーなー」
「……」
……言われてしまった。使えないって……。
分かってるし!
分かってますよーだ!
だから今一生懸命、使えるように実習してるんだってば!
その口の悪さにあっけにとられていると、勝ち誇ったように涼しい顔して彼は続ける。
「シカトはするし、院内把握してないし、ここの看護師どうなってんの?あ、タマゴだったっけ」
わざわざ言い直す無礼な彼。