唇が、覚えてるから

「…っ。そうですよ。ただの実習生ですよ。だから病院内のことなんて分からなくて当然です!」


でも面倒くさいからそれについては反論しなかった。

その代わり、分からないれっきとした理由を並べると、


「うわっ、開き直ったよ」


彼は目を見開いて、鼻で笑った。

そして極めつけに


「使えねーなー」

「……」


……言われてしまった。使えないって……。


分かってるし!

分かってますよーだ!

だから今一生懸命、使えるように実習してるんだってば!


その口の悪さにあっけにとられていると、勝ち誇ったように涼しい顔して彼は続ける。


「シカトはするし、院内把握してないし、ここの看護師どうなってんの?あ、タマゴだったっけ」


わざわざ言い直す無礼な彼。
< 18 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop