唇が、覚えてるから
そう言って目を伏せたあと、真理はこらえられなくなったのかその目を閉じた。
なによ、それ……。
「……事故……?……意識不明…?なに……それ……」
やっと声が出た。
「私の言ってることが嘘だって言いたいの……?」
だって。
私は祐樹に毎日会っていたし、祐樹にだって触れていた。
キスだって……。
そんな人が、意識不明で入院してる……?
「……琴羽」
悲痛な顔に変わっていく真理。
私を呼ぶ声も弱々しい。
……この胸騒ぎは何かを予感していたのかもしれない。
今日病院で、"ハセガワユウキ"という名前を聞いた時から。
だけど、どう説明がつくの……?
「私、毎日祐樹に会ってたんだよ?真理も知ってるでしょ?そんなことあるわけないじゃんっ!」
智久君とグルになって私を騙してる?
私、失恋したばっかりなのに。
何が何だかもう……頭の中はぐちゃぐちゃで。
わけがわからない。
「真理、何の冗談?ちょっとひどすぎるよ」
希美も咎めるように低く声を落とす。