唇が、覚えてるから

「………うそ…」


僅かな望みも打ち砕かれた瞬間だった。


何を思ったかも分からないほど。

感情も

思考も

全部ストップした。


「……っ」


うまく息が出来ない。

呼吸が苦しくなって、襟元をギュッと握り締めた。



な……んで……

どう……なってるの……。



「やだ……祐樹……」


横になっている祐樹に、恐る恐る手を伸ばす。


「……何してんの、こんなとこで」


布団をめくって体をゆする。


「……寝たふりなんて……しないでよ」


何度ゆすっても、その体は惰性で揺られるだけ。


───その時。

祐樹の腕が、反動でだらんと返った。



「……っ」


怖くなってパッと手を放す。



【意識不明】

そんなの、看護学生じゃなくたって分かる知識。

感情だってなければ、呼びかけにだって反応しない。


今、祐樹の命を繋いでいるのは、このチューブだけ……?

これを外したら……

祐樹は───
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