唇が、覚えてるから

嫌。

嫌だよっ……


「ねぇ、祐樹……返事して…」


"一生懸命が伝わる、琴羽の仕事は"


「祐樹、ねぇ嘘でしょ祐樹っ!!」


"毎日、こうして琴羽のこと、待ってていいか"


「ねぇ、起きて………っ!!!」


"デートしよう"


「やだよっ……!!!!」


"琴羽が笑ってるだけで、いつの間にか誰かを幸せにしてることがあるんだ"


全部…全部…残ってるんだよ……。


私の目の前で、笑ってたじゃん………。

あれは、祐樹だったんでしょ………?

もう一度強く揺さぶる。


「祐樹、祐樹、祐樹……っ……」


この腕で抱きしめてよ!


「お願いだからっ」


嘘って言ってよ!


「目ぇ覚ましてよ祐樹っ!」


この唇で、もう一度キスしてよ……!


「祐樹ぃぃぃぃ――――ッ!!!!!!!!!!!」


動かない体の上に、私は崩れ落ちる様に覆い被さった。



あるわけない。

全部夢だったなんてことが。

絶対にあるわけない───
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